結論から言うと、副業やダブルワークの収入が20万円を超えると、確定申告は必要です。
ただし「医療費控除や住宅ローン控除」「払いすぎた税金の還付」を受けることができる人は、確定申告をしたほうが得をします。
なお確定申告の申告方法には、「青色申告」と「白色申告」の2種類がありますが、「青色申告」のほうが金銭的メリットが多くおすすめです。
今回は、「確定申告の概要」「青色申告と白色申告の違い」「確定申告の20万円ルール」について解説します。
確定申告とは?
確定申告とは、1年間の「所得」と「所得税」を確定させ、納税額などを細かく計算して、国(税務署)に申告することです。
「所得」と「所得税」の計算式は、以下になります。
所得=収入-経費所得税=(所得-控除)×税率 =(収入-経費-控除)×税率 |
※「控除」とは、差し引くことのできる金額です。
※「税率」は、所得が多ければ多いほど高くなる仕組みになっています。
参考までに、国税庁による確定申告の定義は、以下のとおりです。
所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税の額を計算し、源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には、その過不足を精算する手続です。(引用元:国税局 確定申告とは)https://www.keisan.nta.go.jp/r4yokuaru_sp/scat2/scat20/scid051.html |
なお無申告の場合、加算税・延滞税といったペナルティが課せられてしまうため、確定申告のし忘れには注意しましょう。
確定申告の種類
確定申告の申告方法は、「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
以下、「青色申告」と「白色申告」の違いを比較していきましょう。
青色申告
「青色申告」とは、簡単に言うと、複式簿記(複雑な簿記)で記帳する申告方法です。
青色申告の対象者は、事業所得や不動産所得・山林所得がある人です。
青色申告の対象者になるには、事前申請が必要で、青色申告をする年の3月15日までに「青色申告承認申請書(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/10.pdf)」を税務署に提出する必要があります。
ただ例外もあり、1月16日以降に開業した場合は、事業開始日から2ヶ月以内であれば「青色申告承認申請書」の提出が可能です。
この青色申告のデメリットは、手続きが複雑なところになります。
しかし一方で、青色申告は、次のように多くの金銭的メリットがあるのです。
- 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
- 最長3年間、赤字を繰り越せる
- 家族への給与を必要経費にできる(青色事業専従者給与)
- 自宅が仕事場なら、家賃や光熱費の一部を経費にできる(家事関連費)
- 減価償却の特例が受けられる
余談ですが、青色申告で、単式簿記(簡易的な簿記)を用いる方法もあります。
ただ単式簿記で記帳すると、最大65万円の特別控除を受けられなくなり、10万円の控除しか受けられません。
そのため節税効果を得たいなら、複式簿記で記帳しましょう。
白色申告
「白色申告」とは、簡単に言うと、単式簿記(簡易的な簿記)で記帳する申告方法です。白色申告の対象者は、「青色申告承認申請書」を期限内に提出しなかった人です。
白色申告は、青色申告のような事前申請が不要で、「青色申告承認申請書」を期限内に提出しないと、自動的に白色申告を行うことになります。
白色申告は、手続きが簡単というメリットはあるものの、下記のようなデメリットがあります。
- 特別控除が受けられない
- 赤字が繰り越せない
このように白色申告は、金銭的デメリットが非常に大きいため、基本的におすすめできません。
確定申告をする必要がある人とは?
続いて、確定申告をする必要がある人について解説しましょう。
今回のテーマは副業・ダブルワークなので、ビジネスパーソンが副業をしているケースを想定します。
副業をして確定申告が必要な人は、大きく2つパターンです。
- アルバイト以外の副業所得が、20万円を超えている人
- 副業アルバイトの給与所得が、20万円を超えている人
余談ですが、本業の給与収入が年間2,000万円以上あるビジネスパーソンは、アルバイトや業務委託などの副業所得が0円でも確定申告は必要になります。
参考までに、国税庁HPの「確定申告が必要な方」の記載内容は以下になります。
(画像引用元:国税庁「確定申告が必要な方」)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/a/01/1_06.htm
アルバイト以外の副業所得が20万円を超えている人
アルバイト以外の副業所得が20万円を超えると、確定申告が必要になります。
アルバイト以外の副業所得とは、たとえばクラウドソーシング(業務委託)・YouTube・ブログ・メルカリなどを通じた副収入です。
副業アルバイトの給与所得が20万円を超えている人
副業でやっているアルバイトの給与所得が20万円を超えた場合も、確定申告が必要になります。会社員の場合、年末調整が行なわれるのは1社のみで、アルバイト先の給与所得は年末調整されません。この年末調整されない給与所得が20万円を超えると、確定申告が必要になるのです。
※例外として、アルバイトを掛け持ちして年収103万円以下になる方は、所得税の確定申告は不要(任意)になります。
以上を整理すると、アルバイトも、アルバイト以外も、副業所得が20万円を超えてしまうと、確定申告が必要ということです。
なお副業所得が20万円以下のとき、確定申告が不要になることは、「20万円ルール」と呼ばれています。
副業所得20万円以下でも、確定申告が必要な人とは?
副業の所得が20万円を超えたら、基本的に確定申告は必要です。
しかし一方で、副業の所得が20万円以下でも、確定申告が必要な人もいます。
- 医療費控除や住宅ローン控除を受ける人
- 払いすぎた税金の還付を受ける人
このどちらかに該当する方は、確定申告は義務ではありませんが、確定申告をしたほうが得をします。
医療費控除や住宅ローン控除を受ける人
何かしら控除を受けることができる場合、確定申告すると減税につながるため、確定申告をしたほうが得です。
代表的な控除としては、「医療費控除」や「住宅ローン控除」があります。
医療費控除とは、自分または生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った金額が「一定額」を超えたときに受けられる所得控除です。
医療費控除の対象者は、具体的には、以下になります。
- 1年間の医療費が10万円を超えた人
- 1年間の総所得金額等が200万円未満で、1年間の医療費が総所得金額等の5%を超えた人
そして住宅ローン控除(住宅借入金特別控除)とは、個人が住宅ローンを利用し、一定要件を満たすと受けられる控除です。
住宅ローン控除の詳しい要件などを知りたい方は、国税庁の「一般住宅の新築等をした場合」をご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1212.htm
払いすぎた税金の還付を受ける人
税金を支払いすぎてしまった人は、そのぶんを還付してもらうことができます。
還付とは、払いすぎた税金を返還することです。
還付申告をすることで、還付金(過払い金)が戻ってくる仕組みになっています。
たとえばイラストや原稿などを納品する場合、確定申告をすると、源泉徴収で差し引かれている金額が戻ってくることがあるのです。
ちなみに、確定申告の必要がない人の還付申告は、還付申告をする年ぶんの翌年1月1日から5年間実施できます。
確定申告「20万円ルール」のまとめ
確定申告の「20万円ルール」について、改めて整理します。
副業をしているビジネスパーソンで、確定申告が必要な人は、主に2パターンです。
- アルバイト以外の副業所得が20万円を超えている人
- 副業アルバイトの給与所得が20万円を超えている人
ただし副業の収入が20万円以下でも、以下のような場合、確定申告をしたほうが得をします。
- 医療費控除や住宅ローン控除を受ける人
- 払いすぎた税金の還付を受ける人
無申告の場合、ペナルティが課せられてしまうので、確定申告が必要な人は忘れないように注意しましょう。