2025年度の最低賃金引き上げは過去最大。平均時給1,118円、前年比63円増

このコラムは次のような方に向けて執筆しています!
  経営者・人事労務担当の方
  中小企業や零細企業の経営課題に関心のある方
  家計や景気動向に関心を持つ生活者の方


厚生労働省の中央最低賃金審議会は8月4日、2025年度(令和7年度)の全国平均最低賃金を時給1,118円とする引き上げ目安を発表しました。前年度比で+63円(約6%増)となり、制度開始以来の過去最大の引き上げ幅です。今回の改定により、日本全国すべての都道府県で、最低賃金が1,000円以上になる見通しです。

最低賃金引き上げが過去最大になった背景

最低賃金の引き上げが過去最大になった背景として、主に次の3つが考えられます。

  • 物価上昇への対応:2024年以降、食品や電気料金の値上げなど物価上昇が続く一方で、実質賃金は下落傾向が続いている。
  • 政府の長期目標:日本政府は「2029年までに全国平均1,500円」を掲げており、その実現に向けた推進策の一環。
  • 労働組合の強い要望:2025年春闘の平均賃上げ率は5.25%と34年ぶりの高水準(5%超)で、社会全体の賃上げ機運が高まっている。

また、日銀は今回の引き上げについて、サービス価格の上昇や物価安定目標への寄与を指摘しており、今後の金融政策にも影響を与える可能性があります。

最低賃金引き上げに関する課題と対策

最低賃金の引き上げは、とくに中小企業や零細企業にとって大きな負担になり得ます。理由は主に次の2点です。

  • 価格転嫁の難しさ:利益率が低い業種では、コスト増を販売価格に十分転嫁しにくい。
  • 規模・地域要因:地方や小規模事業者ほど、人件費の増加を吸収しにくい。

対策としては、価格転嫁の推進や、賃上げに関する補助金の活用などが考えられます。政府・自治体の各種支援策を確認し、自社の状況に合わせて組み合わせることが重要です。

最低賃金引き上げが家計・景気に与える影響

最低賃金の引き上げは、家計にプラスの影響をもたらし、消費の押し上げが期待されます。具体的には次の効果が想定されます。

  • 可処分所得の増加:サービス・小売業などへの需要が波及。
  • 内需拡大:個人消費の底上げによる景気の下支え。
  • 実質賃金の改善:生活者の購買力回復に寄与。

一方で、物価上昇が続く場合は、実質的な生活改善や景気回復の実感には時間を要する可能性があります。

最低賃金引き上げの今後

厚生労働省は2025年8月4日、2025年度の全国平均最低賃金を時給1,118円とする引き上げ目安を発表しました。しかし、日本政府は2029年までに1,500円を目指しており、今回の改定はその通過点に過ぎません。

2029年までに最低賃金1,500円を実現するには、年7~8%以上の上昇ペースを維持する必要があります。企業は中期的な人件費計画や価格戦略、生産性向上策を前提に、早めに打ち手を検討しておくことが重要です。

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