キャリアアップ助成金とは?正社員化・処遇改善で最大120万円受給!

契約社員やパートタイマーを正社員に登用したり、時給を3%以上引き上げたりすると、数万〜数十万円のキャリアアップ助成金が支給される可能性があります。

しかもこの助成金、中小企業や個人事業主の方が優遇されており、大企業よりも支給額が高く設定されています。特に人材確保に悩む中小企業にとっては、見逃せない制度です。

ただし、令和7年度(2025年4月以降)からは制度の一部が改定され、正社員化コースの一般対象者に対する助成額が半減するなど、支給内容に変更が加わっています。

それでも、条件を満たせばしっかりと受給できる制度であることに変わりはありません。「もらえるものは、もらっておくべき」制度の代表格といえるでしょう。

本記事では、そんなキャリアアップ助成金について、
「誰が対象なのか」「いくらもらえるのか」「どう申請すればいいのか」「具体的な活用例」まで、わかりやすく解説していきます。

キャリアアップ助成金とは?令和7年度(2025年)概要

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者等に対して、正社員化支援または処遇改善支援のキャリアアップ促進策を講じた事業者に支給される助成金になります。

たとえば契約社員やパートタイマーを正社員化したり、時給3%以上アップなどの処遇改善をしたりすると、助成金がもらえるという制度です。

厳密に言うと、有期雇用労働者等とは、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者などの非正規雇用労働者になります。

そして支給対象者は、有期雇用労働者等(従業員)ではなく、あくまでも事業者です。
令和7年度(2025年4月~2026年3月)のキャリアアップ助成金は、全6コースから構成されています。

正社員化支援1.正社員化コース
2.障害者正社員化コース
処遇改善支援3.賃金規定等改定コース
4.賃金規定等共通化コース
5.賞与・退職金制度導入コース
6.社会保険適用時処遇改善コース

それぞれ、どのような条件を満たす事業者が、支給対象者になるのでしょうか。

キャリアアップ助成金は誰がもらえる?対象者の条件

キャリアアップ助成金の「対象となる事業主」「除外となる事業主」「中小企業事業主の定義」は、以下になります。

対象となる事業主

キャリアアップ助成金の対象となる事業主(全コース共通)は、以下すべての条件を満たす事業者です。

①雇用保険適用事業所の事業主②雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主 ※キャリアアップ管理者は、複数の事業所および労働者代表との兼任はできない。③雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長に提出した事業主④実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主⑤キャリアアップ計画期間内に計画に記載した正社員化・処遇改善に取り組んだ事業主(支給申請時点で各コースに定めるすべての支給要件を満たしている事業主)

(参考:厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001469672.pdf

なお事業主の定義には、民間の事業者はもちろんのこと、民法上の公益法人・特定非営利活動促進法上の特定非営利活動法人(NPO法人)・医療法上の医療法人・社会福祉法上の社会福祉法人なども含まれます。

また上記に加えて、各コースの要件も加わってくる点には、ご注意ください。

除外となる事業主

キャリアアップ助成金の除外対象者は、以下のいずれかに該当する事業者です。

①支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主(支給申請後、滞納していることの通知はしないため、確認のうえ申請が必要)② 支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主③ 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主④ 暴力団と関わりのある事業主⑤ 暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している事業主⑥ 支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している事業主⑦ 支給申請時または支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない※事業主

(参考:厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001469672.pdf

※雇用保険被保険者数が0人の場合や事業所が廃止されている場合(吸収合併等による統廃合や雇用保険の非該当承認を受けている場合を含む)等のこと。

中小企業事業主の定義

中小企業事業主の範囲は、以下のように線引きされています。

中小企業事業主に分類されると、基本的にもらえる助成金が増えるため、要チェックです。

(画像引用元:厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001469672.pdf

「誰がもらえるか」という対象者条件を把握したら、「いくらもらえるのか」という助成額を押さえていきましょう。

キャリアアップ助成金はいくらもらえる?正社員化コース改悪

キャリアアップ助成金は、以下の6コースがあり、支給額や加算額が異なります。

  1. 正社員化コース
  2. 障害者正社員化コース
  3. 賃金規定等改定コース
  4. 賃金規定等共通化コース
  5. 賞与・退職金制度導入コース
  6. 社会保険適用時処遇改善コース

それぞれ、いくらもらえるのか確認していきましょう。

種類1.正社員化コース

正社員化コースは、有期・無期雇用の非正規労働者を正社員化すると、助成金がもらえるコースです。

支給される助成金の金額は、中小企業と大企業で大きく異なり、中小企業のほうが多いのが特徴になります。

▼支給額(中小企業)

雇用転換重点支援対象者(※1)一般対象者(左記以外)
有期雇用→正規雇用80万円40万円
無期雇用→正規雇用40万円20万円

▼支給額(大企業)

雇用転換重点支援対象者(※1)一般対象者(左記以外)
有期雇用→正規雇用60万円30万円
無期雇用→正規雇用30万円15万円

(※1)重点支援対象者とは、a~cのいずれかに該当する者

a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者
b:雇入れから3年未満で、以下の両方に該当する有期雇用労働者
 ・過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下
 ・過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
c:派遣労働者、母子家庭の母等、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者

注意点として、新規学卒者で雇入れ日から起算して1年未満の者は、支給対象外です。
雇用期間が通算5年を超える有期雇用労働者は、無期雇用労働者とみなされます。
また、以下の措置内容を実施すると、助成額が加算されます。

▼加算額

措置内容加算額
正社員転換等制度を新たに規定し、当該区分に転換等した場合1事業所当たり20万円(大企業なら15万円)
多様な正社員制度(※2)を新たに規定し、当該区分に転換等した場合1事業所当たり40万円(大企業なら30万円)

(※2)勤務地限定・職務限定・短時間正社員いずれか1つ以上。

令和7年度(2025年4月以降)の大きな変更点として、重点支援対象者以外の一般対象者は、助成額が半減している点にご注意ください。

令和6年度の一般対象者は、重点支援対象者と同じ助成額でしたが、改悪(https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001450174.pdf)されました。

種類2.障害者正社員化コース

障害者正社員化コースは、障害のある有期・無期雇用の非正規労働者を正規雇用労働者等(正社員等)に転換すると、助成金がもらえるコースです。

障害の度合いや種類によって、以下のように、支給金額が変わってきます。

▼支給額(重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者の場合)

雇用転換中小企業大企業
有期雇用→正規雇用120万円90万円
有期雇用→無期雇用60万円45万円
無期雇用→正規雇用60万円45万円

▼支給額(重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者以外の場合)

雇用転換中小企業大企業
有期雇用→正規雇用90万円67.5万円
有期雇用→無期雇用45万円33万円
無期雇用→正規雇用45万円33万円

注意点として、助成額が支給対象期間における対象労働者の賃金を超える場合、当該賃金の総額が上限額になります。

種類3.賃金規定等改定コース

賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定して、賃金を3%以上引き上げると助成金がもらえるコースです。

▼支給額

賃金引き上げ率中小企業大企業
3%以上4%未満4万円2.6万円
4%以上5%未満5万円3.3万円
5%以上6%未満6.5万円4.3万円
6%以上7万円4.6万円

また、以下の措置内容を実施すると、助成額が加算されます。

▼加算額

措置内容加算額
職務評価の手法の活用により賃金規定等を増額改定した場合1事業所当たり20万円(大企業なら15万円)
有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定した場合1事業所当たり20万円(大企業なら15万円)

種類4.賃金規定等共通化コース

賃金規定等共通化コースは、有期雇用労働者等(非正規雇用者)に対して、正規雇用労働者と共通(同一)の賃金規定等を作成・適用すると、助成金がもらえるコースです。

▼支給額

中小企業大企業
1事業所当たり60万円45万円

種類5.賞与・退職金制度導入コース

賞与・退職金制度導入コースは、有期雇用労働者等に賞与(ボーナス)または退職金制度を導入すると、助成金がもらえるコースです。

賞与か退職金制度のどちらか片方導入する場合と、両者を同時導入する場合では、支給金額が異なります。

▼支給額

中小企業大企業
1事業所当たり片方導入:40万円同時導入:56万8,000 円片方導入:30万円同時導入:42万6,000 円

種類6.社会保険適用時処遇改善コース

社会保険適用時処遇改善コースは、有期雇用労働者等を新しく社会保険に適用させるとともに賃金をあげる、または週所定労働時間を延長して社会保険に適用させると、助成金がもらえるコースです。

令和8年(2026年)3月31日までに、新しく社会保険が適用された労働者が対象になります。

▼支給額

中小企業大企業
手当等支給メニュー50万円(3年間の合計)37.5万円(3年間の合計)
労働時間延長メニュー30万円22.5万円
併用メニュー50万円37.5万円

社会保険適用時処遇改善コースの要件(条件)は、たいへん細かくなっています。

詳細は、『キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)(https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001469672.pdf)』の52ページをご覧ください。

キャリアアップ助成金の申請手順

キャリアアップ助成金の申請を行う流れは、下図になります。

(画像引用元:厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001469677.pdf

キャリアアップ助成金の申請手順は、主に以下の5ステップです。

  1. キャリアアップ計画書の作成・提出
  2. キャリアアップ計画書の実施
  3. キャリアアップ助成金の支給申請
  4. キャリアアップ助成金の支給審査
  5. キャリアアップ助成金の支給決定

それぞれ、簡単に説明しましょう。

手順1.キャリアアップ計画書の作成・提出

まずは、取り組み内容の大まかなイメージを記載する『キャリアアップ計画書(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801_00015.html)』を作成します。

キャリアアップ計画の記入例は、『キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)(https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001469672.pdf)』の60ページ以降をご覧ください。

キャリアアップ計画書が完成したら、所在地を管轄する「都道府県労働局」に提出します。

ハローワークは、提出できる場合とできない場合があり、確認が必要です。

手順2.キャリアアップ計画書の実施

キャリアアップ計画書を提出したら、その取り組み予定内容を実施していきます。

具体的には、就業規則などを改定したり、有期雇用労働者等の正社員転換を実施したりするということです。

計画の実施途中で、変更が生じた場合は、『キャリアアップ計画書(変更届)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801_00015.html)』を都道府県労働局に提出する必要があります。

手順3.キャリアアップ助成金の支給申請

キャリアアップ計画書に沿って、まず6カ月ほど実施したら、1期目の支給申請を行います。

キャリアアップ助成金の支給申請には、全コース共通の書類(キャリアアップ助成金支給申請書など)と、コース別の書類が必要です。

これらの必要書類は、厚生労働省の「申請様式ダウンロード(キャリアアップ助成金)(令和7年4月1日以降の取組に係る様式)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801_00015.html)」から、ダウンロードできます。

ちなみに、キャリアアップ計画書を継続して実施すると、2期目以降の支給申請も可能になるイメージです。

支給申請は、1回で終わりではなく、数回必要になるケースが多いでしょう。

手順4.キャリアアップ助成金の支給審査

キャリアアップ助成金の支給申請後、支給審査を受けることになります。

支給審査というのは、申請要件(申請条件)を満たしているかのチェックです。

支給審査は、厳格化傾向、つまり年々厳しいものになってきています。

その理由は、おそらく不正受給の増加問題に対処するためです。

なお審査期間は、混雑していると、半年近くかかることもあります。

手順5.キャリアアップ助成金の支給決定

キャリアアップ助成金の支給審査に通過すると、『支給決定通知書』が送付されます。

1週間か2週間ほどで、指定口座への振り込みが実施されるでしょう。

もし何かわからないことがありましたら、近くの都道府県労働局に問い合わせてみるのがおすすめです。

都道府県労働局の住所や電話番号は、厚生労働省の「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧(https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/index.html)」に記載されています。

キャリアアップ助成金の申請手順を押さえたあとは、具体的な活用例について、見ていきましょう。

キャリアアップ助成金の活用例

キャリアアップ助成金の活用例としては、主に以下の3つが挙げられます。

活用例1.優秀な非正規雇用者の正社員登用

優秀な非正規雇用者(パートタイマー・契約社員・派遣社員など)がいたら、正社員登用しても悪くないかもしれません。

というのも、人手不足対策になるうえに、数十万以上のキャリアアップ助成金が支給されるからです。

ただ令和7年度(2025年4月以降)は、正社員化コースの一般対象者の助成額が半減していることは、非常に残念な点になります。

活用例2.最低賃金引き上げ対策

キャリアアップ助成金は、最低賃金の引き上げ対策を行うための人件費捻出に使うこともできます。

ちなみに、最低賃金と平均賃金は、以下の記事から確認できます。

今後も、さらなる最低賃金引き上げが予想され、早め早めの対策が推奨されます。

活用例3.育児・介護の一段落者の正社員転換

育児・介護が一段落して、フルタイムで働けるようになった非正規雇用者を正社員転換するときに、キャリアアップ助成金を活用できます。

特に、子どもが大きくなったら、正社員になりたいという方は一定数いることでしょう。

もし「正社員になりたい」「正社員になれないなら辞める」といった申し出があったら、キャリアアップ助成金の利用も、検討してみてはいかがでしょうか。

参考までに、育児・介護休業法の最新情報もチェックしたい方は、『育児・介護休業法改正とは?2025年改正内容をわかりやすく解説』もご覧ください。

https://docs.google.com/document/d/1yoyzJmvMWZBaqBqIZnNUGs5LB601Ymlgz-xKIEXnevM/edit?tab=t.0

キャリアアップ助成金のまとめ

最後に、キャリアアップ助成金について、簡単におさらいしましょう。

キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者等に対して、正社員化支援または処遇改善支援のキャリアアップ促進策を講じた事業者に支給される助成金になります。

たとえば契約社員やパートタイマーを正社員化したり、時給3%以上アップなどの処遇改善をしたりすると、助成金がもらえるという制度です。

キャリアアップ助成金のコースは6種類あり、それぞれ申請条件が異なっています。

詳しくは助成金の専門家へ相談すると良いでしょう

この記事の著者

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