フレームワークの「賞味期限」が切れていないか

最近の世の中は、複雑化して予測不能になってきていると感じることはありませんか?

特にAIの普及や価値観の多様化によって、従来の分析モデルが通用しなくなってきている場面も多いことでしょう。そのため、私たちが無意識に使っている思考の「型(フレームワーク)」を現代に合わせてアップデートしておくことが重要です。

そこで今回は、今の時代に知っておくと周囲と差がつくビジネスフレームワークを3つご紹介します。

1. 時代のカオスを読み解く:BANI(バニ)

BANI(バニ)とは、現代のより複雑で不安定な世界情勢を表す概念として、アメリカの未来学者ジャマイス・カシオ氏が提唱したフレームワークです。以下の4つの言葉の頭文字をとっています。

Brittle(もろい)

一見頑丈に見えるシステムや巨大なビジネスモデルでも、予期せぬ出来事(パンデミックや災害など)によって突然崩壊してしまう危うさをはらんでいます。

Anxious(不安な)

先行きが見えず、どの選択が正しいか確信が持てないため、人々が常に強い不安や焦燥感を抱いている状態を指します。

Non-linear(非線形な)

小さな出来事が予測不能な巨大な変化を引き起こすことがあり、「AだからBになる」といった論理的な因果関係が見えづらい状況です。

Incomprehensible(不可解な)

AIのブラックボックス化など、複雑怪奇な現象が増え、人間の論理だけで完全に理解・説明することが困難になっています。

以前は「VUCA(ブーカ:変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)」という言葉がよく使われていました。VUCAが主に「客観的な状況」を表すのに対し、BANIは「システムのもろさや人間の心理(不安)」にまで踏み込んでいるのが特徴であり、次世代の概念として注目されています。

BANIの主な活用シーンとしては、「中長期計画の策定」や「リスクマネジメントの再構築」などが挙げられます。完璧な計画を追求するよりも、失敗してもすぐに立ち直れる「回復力(レジリエンス)」を組織に組み込むことが、今後のビジネスでは重要になります。

2. AI時代の業務革命:ECRS(イクルス)の4原則

ECRS(イクルス)の4原則とは、業務改善を効率的に進めるための視点を4つにまとめたフレームワークです。改善効果が大きい順番(E→C→R→S)に検討を進めるのが鉄則とされています。

  • Eliminate(排除):なくせないか? 

不要な作業や工程(慣習化している会議や使われない資料作成など)を思い切ってやめます。コストをかけずに最大の改善効果を狙える最初のステップです。

  • Combine(結合):一緒にできないか? 

複数の工程をまとめたり、同時に実施したりします。たとえば、情報の入力先を1つに統合して二度手間を防ぐといった工夫です。

  • Rearrange(交換):順番を変えられないか? 

作業の順序、場所、担当者を入れ替えます。順番を変えて待ち時間を減らしたり、その作業が得意な人に割り当て直したりすることで、全体の時間を短縮します。

  • Simplify(簡素化):単純化できないか? 

複雑な作業を誰でもできるようにマニュアル化したり、ツールを導入したりします。近年では、このステップで生成AIやRPA(業務自動化)を活用するのがトレンドです。

ECRSの4原則は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進」「リスキリングのための時間捻出」「残業削減プロジェクト」など、あらゆる業務改善のベースとして非常に有効です。

3. 個人の信頼を資産に変える:P2C(Person to Consumer)

P2C(Person to Consumer)とは、個人が自身のブランドで商品やサービスを作り、消費者に直接販売するビジネスモデルです。「メーカー→卸売→小売」という従来の流通経路や中間業者を介さないのが特徴です。

YouTuberの事例が分かりやすく、HIKAKIN氏の「みそきん」や、ヒカル氏の「ReZARD」などが代表例として挙げられます。

P2Cと似た言葉に「インフルエンサーマーケティング」や「D2C」がありますが、これらとは明確な違いがあります。

  • インフルエンサーマーケティングとの違い: 企業がインフルエンサーに「自社商品の宣伝」を依頼する手法です。P2Cは個人が「自身のオリジナル商品」を売る点で異なります。
  • D2C(Direct to Consumer)との違い: 企業(ブランド)が消費者に直接販売するモデルです。P2Cは主体が「企業」ではなく「個人(Person)」である点が最大の特徴です。

P2Cの主な活用シーンは、「新規ブランドの立ち上げ」や「ファンコミュニティの運営」です。すでに信頼関係が構築されているコミュニティに向けて価値を提供するため、熱量が高く効果的な販売に繋がりやすい傾向があります。

近年では、企業に属するビジネスパーソンであっても、「社員インフルエンサー」として個人の信頼を構築し、そこから自社のビジネスへ繋げるなど、P2Cの考え方を企業活動に取り入れるケースも増えています。

まとめ:思考のアップデートが、未来の可能性を広げる

フレームワークは単なる「知識」ではなく、現場で使うための「道具」です。覚えること以上に、日々の業務に当てはめて活用してこそ意味があります。

また、1つのフレームワークを単体で使うだけでなく、複数を組み合わせて使うことで相乗効果が生まれやすくなります。激動の時代を乗り切るための思考のヒントとして、ぜひ今回ご紹介したフレームワークをご活用ください。

この記事の著者

お客様に役立つ情報をお届けするため、日々新しい情報のキャッチアップや執筆に取り組んでいる編集チームです。お客様事例やビジネスの役に立つコンテンツを通じて、価値ある情報を提供することを目指しています。