残業させないという制約が、ビジネス現場に新たな歪みをつくってしまった可能性があります。残業時間は減少している一方で、体調不良を理由に退職する若者が2倍以上に増えてしまったようです。なぜ、このようなパラドックスが起きているのでしょうか。
本記事では、体調不良を理由に退職する若者が増えた「原因」と「対策」を解説していきます。
体調不良を理由に退職する若者が2倍以上も増加
近年、体調不良を理由に退職する若者が、2倍以上に増えているそうです。UZUZグループが、既卒・第二新卒として就職活動中の20代男女(34,686名)を対象に、キャリア面談の予約時に実施したアンケートのデータを見ていきましょう。
「Z世代における『退職・転職理由』の実態レポート(2020年~2026年上半期)」によると、体調不良による退職が急増していることがわかります。

(画像引用元:PR TIMES)
退職理由として「体調を崩したため」を選んだ割合は、2020年の10.8%から2026年上半期には25.5%へと2倍以上に増加しました。しかし一方で、残業時間は減っているようです。

(画像引用元:PR TIMES)
つまり、残業時間は減少しているにもかかわらず、体調不良を訴える若者が増えている状況です。労働時間が減少して、数字上の帳尻は合っているということは、どこかに無理があるのでしょう。いったい、何が問題なのでしょうか。
体調不良を理由に退職する若者が増えた原因
体調不良を理由に退職する若者が増えた原因は、主に以下の3つが考えられます。
原因1.業務密度の過密化による疲弊
労働時間が削減されても、個人の業務量や目標が据え置かれているケースが多いです。短い時間の中に大量のチャット対応や複数案件の納期が詰め込まれると、頻繁なタスク切り替えで脳は激しく疲弊してしまいます。「残業が少ない=健全」という発想で、真面目な若手ほど「終わらないのは自分の能力不足」と思い込み、周囲に隠して抱え込んだ末に限界を迎えることがあります。
原因2.特定の若手層への負荷集中
残業規制の強化は、確実に成果を出せる優秀な若手へのしわ寄せを生んでいます。管理職が限られた時間内で成果を出すために、手戻りの少ない特定の社員に仕事を集中させがちになるからです。優秀な若手ほど責任感から「弱音を吐けば評価が下がる」「出世コースから外される」という恐怖を抱きやすくなります。そのため、周囲にはスマートにこなしているように見えても、内面は過度なプレッシャーで摩耗していることがあります。
原因3.心理的安全性の欠如
職場に漂う見えない緊張感や失敗を許さない管理体制が、若手のエネルギーを奪っている可能性があります。表面的な優しさの裏にある、失敗への恐怖や拒絶の空気がストレスとなるためです。他人が詰められている光景やチャットの冷淡な文面から「弱音を受け入れてもらえない」と察知していることでしょう。結果として、1on1などで状況を尋ねられても「限界です」と本音を言えずに孤立してしまうケースがあります。
体調不良を理由に退職する若者を減らす対策
体調不良を理由に退職する若者を減らす対策として、主に次の3つが考えられます。
対策1.業務のスリム化・分散化
若手の疲弊を防ぐためには、残業時間の削減だけではなく、時間内の業務密度そのものを引き下げるアプローチも大切です。労働時間の数字を操作しても、短い時間の中に大量のタスクが詰め込まれる現状が変わらなければ、個人の脳は摩耗し続けるためです。たとえば、個人の抱える案件数や同時進行のプロジェクト数をマネジメント指標に組み込んで優秀層への負荷集中を防ぐとともに、社内調整や重複する会議を徹底的に廃止し、生成AIなどの導入により若手をタスク過剰から解放します。
対策2.ストレスの可視化と迅速な介入
メンタル不調は、個人の問題としてだけでなく、組織全体のシステムやフローの課題として捉え直す必要があります。形式的なチェックで終わらせず、負荷が高まっている部署の体制見直しや業務の引き上げを即座に行う運用フローが求められるためです。たとえば、月数回のパルスサーベイにより「疲弊度」の悪化を自動検知するシステムを導入するとともに、アラート発生時は上司や人事が即座に介入し、案件の引き継ぎや納期調整を検討するフローを仕組み化します。
対策3.安心して相談できる制度設計
若手が本音のSOSを出せる職場環境を作るには、評価と相談を完全に切り離した客観的な制度設計を導入する必要があります。上辺だけの声かけだけでは、「能力不足と見なされ評価を下げられる」という若手の恐怖や孤立を解消できないためです。たとえば、評価権をもたない先輩によるメンター制度を構築したり、外部の匿名カウンセリング窓口を設置したりして、これらの利用が人事評価に一切影響しないことをガイドラインに明文化して周知します。
まとめ:体調不良を理由に退職する若者を防ぐために
残業削減の裏で起きている若手の体調不良による退職は、「業務密度の過密化」「優秀層への負荷集中」「評価を恐れてSOSを出せない心理」が主な原因です。
この歪みを解消するために、企業は次の3つの対策がポイントとなります。
- 業務のスリム化:タスク量を削減し、特定の若手への負荷集中を防ぐ
- ストレスの可視化と介入:サーベイなどで疲弊度を検知し、組織が即座にサポートする
- 相談制度の設計:評価と切り離したメンター制度や外部窓口を整備する
労働時間の「量」を調整するだけでは不十分です。時間の「質(業務密度)」を適正化し、本音を隠さずに済む「環境づくり」を徹底することが、若手の離職を防ぐカギとなります。










