PRと広告の違いは、「Love me(好きになって)」と「Buy me(買って)」というスタンスです。
PR会社と広告代理店の大きな違いは、「大衆との関係構築」と「大衆への販売促進」という役割になります。
このような違いから、両者の仕事内容は「相互に機能を補完し合う関係」にあると言えるのです。
身近なニュースでは、2023年10月の芸能事務所の記者会見にて、PR会社が指名NGリストを作成していたのがバレるという失態が注目を浴びました。
その会見が逆効果のイメージダウンにつながり、芸能事務所がPR会社に謝罪を求める異例の事態になったのは記憶に新しいでしょう。
そこで、本記事では「PRと広告の違い」「PR会社と広告代理店の違い」を徹底比較していきたいと思います。
PRとは、公衆とよい関係を築くための広報活動
PRとは、パブリックリレーションズ(Public Relations)の略で、「公衆(パブリック)」と良好な「関係(リレーションズ)」の構築や維持を行う広報活動です。
要するに、社会との良好な関係を保つための発信活動になります。
PRの特徴は、信頼関係重視の発信
PRのターゲットは幅広く、大衆・メディア関係者・利害関係者(ステークホルダー)など、多くの方に向けて発信します。
そして、ただ情報発信をするのではなく、大衆やメディア関係者・利害関係者との信頼関係を重要視した発信が特徴です。
PRと広告の違いは、「Love me」か「Buy me」か
PRと広告の大きな違いは、「Love me」と「Buy me」のスタンスです。
- PRの主目的は、Love me(私を好きになって)
- 広告の主目的は、Buy me(私の商品・サービスを買って)
たとえば、記者会見やプレスリリースなどの「PR」は、報道・ニュースとして多く取り上げられます。
一方で、テレビCMや駅看板などの「広告」は、よりダイレクトに売り込むというスタンスの違いがあるのです。
続いて、PR会社の仕事内容について、見ていきましょう。
PR会社とは、広報業務のサポートする会社
PR会社とは、企業や団体に依頼を受けて、PR・広報業務のサポートや代行サービスを行う会社です。
PR会社の仕事内容は多岐にわたりますが、代表的なものは以下の5つになります。
仕事内容1.メディアリレーションズ
メディアリレーションズとは、マスメディア(テレビ・新聞・雑誌など)やWebメディア(ニュースサイトなど)の記者や担当者と、良好な関係性を構築し維持する取り組みです。
メディアとのつながりを深めることで、パブリシティの獲得、つまりメディアへの露出が成功しやすくなります。
仕事内容2.PR戦略の策定
PR会社のメイン業務は、クライアントのビジネスゴール達成のため、効果の高い最適なPR戦略を考えることです。
具体的には「どのようにメディアに露出して、情報を拡散するか」「どのように企業のイメージアップや認知度向上につなげるか」といったPR戦略を立てます。
仕事内容3.危機管理広報
危機管理広報とは、事件や不祥事を起こし危機的状況に陥ったときに、ネガティブな影響を最小限に抑える広報の対応のことです。
たとえば、ジャニーズ事務所(SMILE-UP.)性加害問題の記者会見対応をサポートするのが、PR会社の業務内容になります。
仕事内容4.イベントの企画や運営
PR会社では、メディアや消費者に向けたイベントの企画・運営も行います。
具体的には、メディア向けのイベントなら記者発表会やプレスツアー(メディアツアー)、消費者向けのイベントなら体験ツアーや講演会の実施です。
仕事内容5.デジタルPR
デジタルPR、つまりオウンドメディアやソーシャルメディア(SNS)で広報活動を行うことも、PR会社の業務内容です。
たとえば、プレスリリースの作成や拡散のサポートなどを行い、新商品や新サービスを多くの人にしってもらう手伝いをします。
では、よく混同されがちな、広告代理店の仕事内容には何があるのでしょうか。
広告代理店とは、広告・宣伝業務を代行する会社
広告代理店とは、企業や団体に依頼を受けて、広告・宣伝業務を代行する会社です。
広告代理店の仕事内容は、主に以下の5つになります。
仕事内容1.広告プランニング
クライアントの目的やKPI(数値目標)に沿って、広告の戦略やキャンペーンをプランニングします。
具体的には、ターゲット・広告メディア・コンバージョンアクション(ユーザーに喚起する行動)の選定などの企画提案です。
仕事内容2.広告クリエイティブの制作
広告のプランニングを立てたら、基本的に、広告代理店が広告制作会社に「広告クリエイティブの制作」を依頼します。
広告クリエイティブとは、広告に使用する素材であり、キャッチコピー・写真・動画などを組み合わせたコンテンツです。
仕事内容3.メディアプランニング
メディアプランニングとは、「メディア媒体への広告出稿計画」という意味です。
広告代理店は、出稿するメディアやタイミング、露出方法などを計画することになります。
仕事内容4.メディアバイイング
広告代理店は、メディアプランニングだけではなく、メディア媒体(テレビ・新聞・ポータルサイトなど)がもっている広告枠の買いつけ業務も行います。
これはメディアバイイングと呼ばれ、最適な価格での購入や広告の配置タイミングなどの交渉も業務内容に含まれるのです。
仕事内容5.広告の運用や効果測定
Web広告(Google広告やFacebook広告など)を扱う場合には、出稿した広告をリアルタイムに運用したり、クライアントに成果報告をしたりする業務も発生します。
広告効果を最大化するためにも、効果測定やA/Bテストを行い、調整する業務は欠かせないのです。
PR会社と広告代理店の違いは3つ
PR会社と広告代理店は、「目的」「掲載費用の有無」「主導権の所在」が大きく違います。
この3つの観点で、PR会社と広告代理店の違いを比較していきましょう。
違い1.目的(関係構築か販売促進か)
クライアントがPR会社に依頼する目的は「大衆との関係構築」で、広告代理店に依頼する目的は「大衆への販売促進」と言えます。
両者は、以下のように役割が違うのです。
- PR会社の役割は、関係づくり
PR会社では、クライアントの評判やイメージを良好に保つことを目的に、公衆や関係者に対して、特定のメッセージや情報を伝える。 - 広告代理店の役割は、売ること
広告代理店では、クライアントの商品やサービスを販売促進することを目的に、消費者の興味や販売意欲をそそる。
違い2.掲載費用(無料か有料か)
PR会社に依頼すると掲載費用が発生しない一方で、広告代理店は掲載費用がかかる点が違います。
両者の詳しい違いは、以下のとおりです。
- PR会社は、掲載料が基本的に無料
メディア側が報道の枠を準備して、コンテンツ制作を行うため掲載費用が不要になる。 - 広告代理店は、掲載料が有料
メディアの広告枠の買いつけ費用や、広告クリエイティブの制作費用などが発生する。
違い3.主導権(メディア側か依頼者側か)
主導権や決定権の所在が、PR会社はメディア側なのに対して、広告代理店は依頼者(広告主)側という違いもあります。
両者の詳しい違いは、以下のとおりです。
- PR会社なら、主導権はメディア側
メディア側が、掲載する内容・タイミング・場所を決定する。 - 広告代理店なら、主導権は依頼者(広告主)側
依頼者(広告主)であるクライアント側が、掲載する内容・タイミング・場所を決定する。
PRと広告、PR会社と広告代理店の違いのまとめ
最後に、「PRと広告の違い」「PR会社と広告代理店の違い」をおさらいしましょう。
「PRと広告の違い」は、以下のとおりです。
- PRのスタンスは、Love me(私を好きになって)
- 広告のスタンスは、Buy me(私の商品・サービスを買って)
「PR会社と広告代理店の違い」は、以下のとおりです。
- PR会社は、「大衆との関係構築」という役割がある
- 広告代理店は、「大衆への販売促進」という役割がある
企業や団体にとって、PRと広告のどちらも大切で、欠かすことのできない取り組みになります。
その意味において、PR会社と広告代理店の仕事内容は、補完関係にあると言えるのです。