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2023.11.06 DXトピックス

リスキリングとは?企業・個人のメリットや補助金、DX人材育成の企業事例を解説

「企業・個人がもつ知識やスキルには、賞味期限がある」という説を聞いたことはありますか?

実は、昨今の技術革新やビジネスモデル変革により、特にデジタル分野の知識やスキルは、5年も経てば賞味期限切れになる状況になりつつあるのです。

そんななか岸田総理は、2022年10月に「リスキリング(学び直し)支援に、5年で1兆円投じる」と表明しました。
この背景から、リスキリング支援(主にDX人材育成支援)には巨額の予算があり、補助金や助成金も充実しているのです。

そこで今回は、「リスキリングを行う企業&個人のメリット」「企業&個人対象の補助金」「DX人材育成の企業事例」を主なテーマとして、わかりやすく解説していきます。

※個人向けの補助金等の対象講座は、「教育訓練講座検索システム」から今すぐ確認可能です。

リスキリングとは、新しいスキルの学び直し

まずは全体像を把握するために、「リスキリングの意味と学習内容」と「リカレント教育との違い」を見ていきましょう。

リスキリングの意味と学習内容

リスキリング(Re-skilling)とは、「DX時代」や「人生100年時代」の働き方に対応するために、新しい知識やスキルを学び直すことを意味します。

学習内容の具体例を挙げると、プログラミングやデータサイエンス、生成AI(ChatGPT)活用など、ITスキルの習得が人気です。
ちなみに、新しいデジタル技術の学び直しは、「デジタルリスキリング」と呼ばれています。
このほかにも、英語スキル(TOEIC・TOEFLなど)や、マーケティングスキルも注目をされています。

そして、リスキリングの取り組み例としては、以下が挙げられます。

  • 企業研修で業務時間内に、オンライン講座や対面講座を受講する
  • 働きながら業務時間外に、プログラミングスクールや通信制大学に通う

リカレント教育との違いは、仕事の有無

リスキリングとリカレント教育の大きな違いは、「仕事をしているか否か」です。
仕事と同時並行で取り組むと「リスキリング」、仕事をしない状態で取り組むと「リカレント教育」になります。

両者の詳しい違いは、下表のとおりです。

リスキリング仕事に役立てることを目的に、働きながら新しいスキルを学び直すこと。
企業寄りの考え方であり、経済産業省がDXとともに、リスキリングを推進している。
リカレント教育生涯学び続けることを目的に、主に仕事をしていない状態で、大学などの教育機関で勉強すること。
個人寄りの考え方であり、文部科学省が推進している。

では、そもそも仕事をしながら、リスキリング(学び直し)をする意味はあるのでしょうか。

リスキリングを行う企業・個人のメリット3選

ここからは企業・個人別に、リスキリングを実施するメリットを3つずつ見ていきます。

企業のメリット3つ

企業がリスキリングに取り組むメリットは、以下のとおりです。

1.人材不足解消につながる

経済産業省がみずほ情報総研株式会社に委託した『IT人材需給に関する調査』(2019年3月)によると、2030年に約79万人のIT人材が不足すると予想されています。
人材不足解消の対策として、従業員にリスキリングの促進を行えば、自社の企業文化を継承しながら、IT人材不足などの解消につなげることが可能なのです。

2.業務効率化や生産性向上につながる

たとえば、デジタルリスキリング(デジタル技術の学び直し)を推進することで、「業務の工数削減」や「業務の自動化」といった効率化が期待できます。
このほかにも、英語のリスキリングを促進できれば、海外顧客の対応業務などの生産性を上げることが可能です。

3.新規事業や新商品のアイデア創出につながる

新しいテクノロジーやスキルを学んだ社員がいれば、新規事業や新商品のアイデアが生まれやすくなります。
特にITスキルは陳腐化が早く、5年も経てば賞味期限切れスキルのようになってしまい、学び続けないとイノベーションはなかなか起こせません。

個人のメリット3つ

一方で、個人がリスキリングに取り組むメリットは、以下のとおりです。

1.仕事消滅時代の生存戦略になる

2020年のダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)では、「第4次産業革命により、数年で8,000万件の仕事が消失する一方で9,700万件の新たな仕事が生まれる」という予測が報告されました。
この仕事が消滅していく時代において、リスキリングはビジネスパーソンの生存戦略になると考えらえます。

2.新しい業務に抜擢されやすくなる

リスキリングを行えば、担当できる仕事が増えてくるため、新しい業務に抜擢される可能性が高まります。
新しい職種や業務を担当できれば、昇給ひいては昇進にも、つながるかもしれません。

3.キャリアアップ転職が成功しやすくなる

新しいスキルの学び直しを実施した人材は、自社だけではなく、他社も欲しがる人材にもなりえます。
つまり、自分の市場価値が高まり、キャリアアップ転職が成功しやすくなると考えられるのです。

リスキリングを行う企業・個人の補助金や助成金

リスキリングに取り組む企業あるいは個人を対象に、日本政府はさまざまな補助金を用意しています。
この背景として、岸田首相は2022年10月3日の所信表明演説にて、「リスキリング支援に、5年で1兆円投じる」と表明したことが挙げられます。

それでは、企業・個人別に、どのような補助金や助成金があるのか見ていきましょう。

企業対象の補助金等2つ

企業が従業員に対して、リスキリングを行うと補助されるのは、主に2つの助成金になります。

1.DXリスキリング助成金

「DXリスキリング助成金」とは、東京都にある中小企業等の従業員を対象に、DXに関する職業訓練を実施する経費を助成する制度です。

ざっくりとした対象者は、東京都に本社または事業所(支店や営業所)の登記がある中小企業、もしくは個人事業主(フリーランス)になります。

詳しい要件は、公益財団法人東京しごと財団の公式HP「DXリスキリング助成金」にて、ご確認ください。

2.人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)

「事業展開等リスキリング支援コース」の人材開発支援助成金とは、新規事業立ち上げや業務効率化、脱炭素化などに取り組む事業者を対象に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

支給要件は、細かく複雑になっているので、一次ソースである『令和5年度版パンフレット(事業展開等リスキリング支援コース)詳細版』で確認しておくことをおすすめします。
厚生労働省の公式HP「人材開発支援助成金」のページも参考になるでしょう。

個人対象の補助金等3つ

個人がリスキリングを行うと補助されるお金としては、教育訓練給付制度の3つの給付金があります。

1.一般教育訓練給付金

一般教育訓練給付金とは、主に雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象で、受講費用の20%(上限10万円)が講座修了後に給付される制度です。

詳しくは、厚生労働省のリーフレット『一般教育訓練給付金の御案内』をご覧ください。

2.特定一般教育訓練給付金

特定一般教育訓練給付金とは、主に再就職と早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象で、受講費用の40%(上限20万円)が講座修了後に給付される制度です。

詳しくは、厚生労働省のリーフレット『特定一般教育訓練給付金の御案内』をご覧ください。

3.専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練給付金とは、主に中長期的キャリア形成に資する教育訓練が対象で、受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6カ月ごとに給付される制度です。

補足事項として、以下のように、追加で給付されるケースもあります。

  • 資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で給付される
  • 失業状態にある人が初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する場合、受講開始時に45歳未満であるなど一定の要件を満たせば、教育訓練支援給付金が別途支給される

詳しくは、厚生労働省のリーフレット『専門実践教育訓練給付金・教育訓練支援給付金の御案内』をご覧ください。

なお上記3つの教育訓練給付の対象講座は約14,000講座あり、「教育訓練講座検索システム」で検索できるようになっています。
気になる講座やスクールがある方は、まず検索してみるのが、手っ取り早くておすすめです。

リスキリングでDX人材育成を図る企業事例3選

続いて、リスキリングでDX人材育成を図る国内大企業の事例を3つ見ていきましょう。

企業事例1.日立製作所

日立製作所は、2022年10月に、「学習体験プラットフォーム(LXP)」という新システムを導入しました。
このシステムには4億円も投資されており、2024年度末までに「デジタル人財」を国内外で9万7000人まで増やすことを目標に掲げているそうです。
社員は、デジタルマーケティングやデータサイエンスといった研修や教材を約2万コース以上から最適なものを選び、オンラインで無料で受講できます。

企業事例2.富士通

富士通の時田隆仁社長は、2019年に、IT企業からDX企業への転身を目指すと表明しました。
そして『2020年度 経営方針説明』において、社会・お客様への提供価値の創造と富士通自身のDX企業への変革のため、5年間で5,000~6,000億円もの投資を行うと発表しています。
2020年1月には、顧客企業のDXを支援する新会社、Ridgelinez(リッジラインズ)株式会社も設立しました。

企業事例3.トラスコ中山

トラスコ中山は、システムベンダーであるSAP社の中途社員と、トラスコ中山の次世代リーダー候補を集め、デジタルを活用した新規ビジネス創出を行う研修を行っています。
詳しく知りたい方は、学校法人産業能率大学 総合研究所の「【リスキリング企業事例②】トラスコ中山株式会社様」もご覧ください。
ちなみにトラスコ中山は、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「DX銘柄」に、2020~2023年の3年連続で選出されている優良企業です。

リスキリングのメリットや補助金のまとめ

最後に、企業と個人がリスキリングに取り組むメリットや補助金・助成金について、おさらいしましょう。

まず、リスキリングのメリットは、以下のとおりです。

  • 企業側
    「人材不足解消につながる」「業務効率化や生産性向上につながる」「新規事業や新商品のアイデア創出につながる」など
  • 個人側
    「仕事消滅時代の生存戦略になる」「新しい業務に抜擢されやすくなる」「キャリアアップ転職が成功しやすくなる」など

次に、リスキリングの補助金や助成金は、以下のとおりです。

  • 企業対象
    「DXリスキリング助成金」「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」など
  • 個人対象
    「一般教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」「専門実践教育訓練給付金」など

上記のような理由や背景から、企業も個人も、リスキリングを実施しておくに越したことはないでしょう。

ちなみに弊社では、DXにまつわる副業・転職エージェント「デジカリ」を運営しております。
できるだけ早くDX人材を確保したい企業の方、あるいはDX関連の仕事を探している個人の方は、ぜひご利用ください。

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