「広告予算の決め方」を考える際、ただ損を避けるだけに焦点を当てていませんか?
実際には、損失を避ける心理からくるこうしたアプローチのため、ネット広告の予算が極端に少なくなることがあります。しかし、少額の広告予算では効果を期待するのが難しい場合が多いのです。
では、どのように広告予算を決定すれば、成功を収め、最終的にはコスト対効果の高い投資が可能になるのでしょうか?
この記事では、ネット広告における「予算の設定方法」、日々の予算調整の手法、そして入札価格の調整方法について詳しく説明します。
ネット広告の予算の代表的な決め方
1カ月のネット広告(Web広告やSNS広告)予算の決め方としては、目標からの逆算が基本です。
ネット広告予算を目標から逆算する計算式は、以下になります。
ネット広告予算の計算式 |
広告予算=目標CPA(※1)×目標CV数(※2) =目標顧客獲得単価×目標コンバージョン数 |
(※1)目標CPAとは
CPAとは、「Cost Per Action」の略で、日本語に訳すと“顧客獲得単価”です。つまり、目標CPAは、顧客にとってほしい行動(例:購入や申し込み)を1つ獲得するためにかかる広告費用を指します。
(※2)目標CV数とは
CVとは、「conversion:コンバージョン」の略で、顧客にとってほしい行動(例:購入や申し込み)のことを指します。つまり、目標CV数は、目標とする販売数などの顧客行動数を示します。
具体例として、高級時計をネットショップで販売する場合を考えてみましょう。仮に高級時計1個にかけられるネット広告費用が75,000円で、1カ月の目標販売数が20個だとします。この場合、「目標CPA=75,000」「目標CV数=20」となります。これらを「広告予算の計算式」に適用すると、以下のようになります。
ネット広告予算の計算式【高級時計の事例】 |
75,000(目標CPA)×20(目標CV数)=1,500,000(広告予算) |
このように、目標とするCPAとCV数から逆算して、目安となる月間の広告予算は算出されるのです。
なお目標CPAは、ケースバイケースで算出方法が異なります。
- ケース1.Web完結の低リピート商材
目標CPA=平均売上高-平均原価-限界利益 - ケース2.非Web完結の高リピート商材
目標CPA=顧客生涯価値(LTV)×粗利率×コンバージョンからの成約率
ネット広告の日予算の調整方法
1カ月当たりの広告予算の目安が決まったら、今度は1日当たりの予算、すなわち日予算の決め方(調整方法)を考えていきましょう。
日予算配分の調整方法は、大きく次の2つが挙げられます。
- 「予算消化率」の高い広告配信を増やす
- 「費用対効果」の高い広告配信を増やす
それぞれ解説していきましょう。
1.予算消化率の高い広告配信を増やす
ネット広告では、いくらしっかり月の予算を決めたとしても、「予定通りに予算消化できない」ことは起こります。
そのため、月間の予算消化が追いついているか進捗状況を確認しつつ、予算配分を調整する必要があるのです。
予算消化不良の対応策としては、単純に「予算消化率の高い配信手法を増やす」のが1つの打ち手になります。
ただ言うまでもないと思いますが、余り予算を使い切ることが目的にならないように注意してください。
ここからは、予算消化ができていない事例とその解決策を紹介します。
まずは、下の図表をご覧ください。
上の図表の合計に注目すると、「前日の消化金額が、日予算設定の金額より11,000円少ない」ことがわかります。
この場合、Googleのショッピングと検索が、前日の消化金額が設定した日予算上限まで達しており機会損失が発生している可能性がありますので日予算を増加させます。
予算消化率の高い配信手法の上限金額を増やすというのが1つの解決策になります。
2.費用対効果の高い広告配信を増やす
予算消化率は低いが、費用対効果の高い広告に関しては、思いきって入札する金額(詳細後述)を上げるのも有効な手です。
ここでいう費用対効果の高い広告とは、前日の消化金額まで到達していないものの、直近1週間のCPAが低い配信手法です(下図参照)。
このケースでは、GoogleDSA&Google検索の入札単価を引き上げて、日予算を増額するのをおすすめします。
ちなみに入札単価とは、ネット広告が1回クリックされたときに、広告主が支払う上限金額です。
Google広告やYahoo!広告をはじめとするリスティング広告(検索連動型広告)は、基本的にオークション形式で1クリックの単価(CPC:Cost Per Click)が決まる仕組みになっています。
そのため入札単価を上げれば、広告枠を落札しやすくなり、広告表示回数(インプレッション数)が増えるのです。
ネット広告の入札単価の調整方法
ネット広告の入札単価の調整方法は、大きく2つあります。
- CVRから算出する(内的アプローチ)
- キーワードプランナーから算出する(外的アプローチ)
それぞれ説明していきましょう。
1.CVRから算出する
ネット広告の入札単価の決め方として、次の2つ掛け合わせるという方法があります。
- 目標のCPA(コンバージョンを1件獲得する費用)
- 現状のCVR(コンバージョン率:Conversion Rateの略)
計算式にすると、「目標CPA×現状CVR」です。
ちなみに「目標CPA×現状CVR」は、“上限CPC”と呼ばれる概念になります。
“上限CPC”とは、目標CPA内に収めるための上限(最大)のクリック単価(CPC:Cost Per Click)になります。
イメージしやすいように具体例を挙げましょう。
目標CPA(1件のコンバージョン獲得費用)が5,000円で、現状のCVR(コンバージョン率)が1%であれば、上限CPC(クリック単価)は50円になります。
上限クリック単価内でクリック数を確保できれば、目標CPAを下回る心配はありません。
この考え方で、入単価を上限CPC(クリック単価)に設定するのがおすすめです。
2.キーワードプランナーから算出する
CVRの予想が難しいキーワードを狙う場合は、広告予算の相場からアプローチする方法が特に効果的です。
具体的には、キーワードプランナーで「ページ上部に掲載された入札単価」の低額帯(低価格帯)を調べて、それを設定します。
ちなみに、キーワードプランナーとは、無料で使えるGoogle広告の運用ツールです。
キーワードプランナーで調査できることは、次のようなものがあります。
- 月間平均検索ボリューム
- 競合性(競合広告主の多さ)
- 低額帯・高額帯別の入札単価
- 広告のインプレッションシェア(広告表示回数/広告表示機会)
キーワードプランナーで取得できる数ある情報のなかでも、「ページ上部に掲載された入札単価」の低額帯の数値を入札単価に設定しましょう。
ただし、「ページ上部に掲載された入札単価」の低額帯の数値を入札単価に設定しないほうがよい場合もあります。
それはインプレッションシェア80%以上のときで、入札単価を引き上げても、あまり効果がないケースがあります。
補足すると、インプレッションシェアとは、実際の広告表示回数を広告表示機会で割ったものです。
もしインプレッションシェアが100%だとしたら、広告表示の機会損失が0で、すべての機会に表示されたことを意味します。
話を戻すと、インプレッションシェア80%以上のキーワードは、広告表示の機会損失が20%以下ということです。
広告表示の損失機会が少ないと、入札単価を引き上げても、広告表示回数が伸びる余地は少ないと言えます。
まとめ:ネット広告予算の決め方
最後に、改めてネット広告における予算決めのポイントを整理します。
広告予算の決め方は、目標から逆算して考えるのが基本で、次の計算式に当てはめるのがおすすめです。
広告予算=目標CPA×目標CV数 |
ネット広告の日予算の調整方法は、主に2つあります。
- 予算消化率の高い広告配信を増やす
- 費用対効果の高い広告配信を増やす
ネット広告の入札単価の調整方法も、主に2つです。
- CVRから算出する
- キーワードプランナーから算出する
本記事が、予算決めの参考になればうれしく思います。