本記事では、リスキリングの方法や注目される理由、そしてリスキリング導入時に利用できる補助金・給付金についても紹介します。リスキリング導入に悩む企業の皆様や、転職や再就職を考えている方々に、是非ご覧いただければ幸いです。
リスキリングとは?
リスキリングとは、現在の勤め先で今後必要になるであろう業務スキルを会社主体で従業員が学ぶこと、または転職する際に今後必要になるスキルを個人で学ぶことです。コロナ渦により、近年業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)化が注目されています。さらに、2020年に行われた世界経済フォーラム(ダボス会議)で、「2030年までに世界の10億人をリスキリングする」という宣言が出されたことにより、注目を浴びました。岸田文雄総理もリスキリング支援に注目をしていることから、今後も各企業や個人でのリスキリングの導入が期待されます。
リカレント教育と何が違うの?
リスキリングと似たような取り組みに「リカレント」というものがあります。リカレントとは、大学などの教育機関を利用して個人で必要な技術を学ぶことです。対してリスキリングは、所属をしている会社で、今必要な技術を会社主体で従業員が学ぶことであり、個人で学ぶか会社主体で学ぶかという点が異なっています。また、リカレントの場合は会社を離れて教育機関で学び、スキルを獲得後に会社に戻るイメージが強いですが、支援制度を取っている会社もあるため、必ずしも会社を離れて学ぶというわけではありません。
企業がリスキリングを推進するメリット
従業員が会社内で新たな業務に必要なスキルを身につけられる
リスキリングにより新たに必要なスキルを習得できた場合、そのスキルを用いた仕事には従来の業務も大きく関わってくることが多いため、従来の業務をこなせる人材と自社に今後必要なスキルを獲得した人材の両方を備えた人材が必要になります。また、外部から自社に必要なスキルを持った人材を確保することが難しくなっているため、自社でのリスキリングにより人材確保や業務の効率化を図ることができます。
従業員の自社へのエンゲージメントの向上が期待出来る
会社が従業員にリスキリングを行うことにより、従業員自身が新たなスキルを習得し既存スキルを向上させることができ、その結果、従業員のモチベーションやエンゲージメントが向上することが期待されます。また、会社が従業員のスキルアップに積極的に取り組む姿勢を見せることで、従業員に対する働きやすい環境づくりや、採用時の魅力的な待遇面としても評価されることがあります。
従業員自ら新しいスキルを獲得しようとする
リスキリングにより新たなスキルを習得できると、従業員の中には獲得したスキルを更に深めて学びたいと考える方も出てきます。自発的に学びたいと考えているため、業務へのモチベーションの向上や更なるスキルの獲得による業務の効率化を図ることができます。
個人がリスキリングするメリット
個人がリスキリングするメリットとして、以下の点が挙げられます。
・新しいスキルを習得することにより、DX化に対応した人材として重宝されることが期待できます。
・転職時に有利になる可能性が高くなります。
・DX化に対応した人材はまだ少ないため、副業や業務委託で業務を始め、その後その会社で正社員になる可能性もあります。
リスキリングの国内企業事例
海外ではAmazonなどが早くからリスキリングを導入していたこともあり、今日ではコロナ渦によって日本でも導入する企業が増えてきました。
- 日立製作所
研修機関である「日立アカデミー」を設立。国内のグループ企業の全社員約16万人へ、DX基礎教育を実施。 - 富士通
社内でのDX人材の確保に向け、リスキリングを推進。 - 三井住友フィナンシャルグループ
グループの全社員5万人へDX教育を開始。約10分間のコンテンツを30本以上用意している。
補助金活用でリスキリングを推進
リスキリングを推進するため、企業や個人が活用できる補助金があります。企業での場合、労働力の生産性向上に貢献するための補助金が多く、厚生労働省からの助成金や地方自治体からの補助金などがあります。また、中小企業向けには補助金制度も多数用意されています。個人での場合、職業訓練やスキルアップに必要な費用を補助する制度があります。補助金を利用することで、より効果的かつ効率的なリスキリングが可能となります。
企業がリスキリングで活用できる補助金
①令和5年度DXリスキリング助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)
中小企業が従業員に対し、民間教育機関等が提供するDX関連の教育を、集合又はe-ラーニング等を利用した場合の受講料や教材費等に対して一定割合を助成する制度です。
②事業展開等リスキリング支援コース
「既存事業にとらわれずに、新規事業立ち上げ等の事業展開に伴う人材育成」「業務の効率化や脱炭素化等に取り組むための、デジタル・グリーン化に対応した人材育成」に取り組む事業主を対象とし、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を高率助成により支援する制度です。
個人がリスキリングで活用できる補助金
①専門実践教育訓練給付金
中長期的なキャリア形成に関わる訓練が対象。訓練6ヵ月ごとに受講費用の50%(年間上限額40万円)が支給されます。
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201408/1.html
②特定一般教育訓練給付金
再就職や早期キャリア形成に関わる訓練が対象。訓練修了後に受講費用の40%(上限額20万円)が支給されます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
③一般教育訓練給付金
その他雇用の安定、就職の促進に関わる訓練が対象。訓練終了後に受講費用の20%(上限額10万円)が支給されます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
まとめ
近年、日本でも海外同様にリスキリングが注目されるようになってきました。DX化に対応した人材育成に力を入れる企業が増加し、スキルを持った人材がますます求められる時代となっています。また、社内の業務が全てDX化する時代が近いため、早期にリスキリング教育を導入することで人員確保や業務の効率化につながると考えられます。