生成AIとは?文章・画像生成AIの活用と問題点。企業は利用すべきか。

生成AI(ジェネレーティブAI)とは、人間がプロンプト(命令)すると、自動で文章・画像・音楽&音声・動画などを生成してくれる人工知能です。

代表例を挙げると、対話型の文章生成AI「ChatGPT」、画像生成AI「Stable Diffusion」などになります。

これらの生成AIは、業務効率化などの活用メリットがある一方で、著作権問題の複雑化といったデメリットも抱えているのが現状です。

そこで本記事では、企業が生成AIをビジネス利用すべきか判断するのに役立つ「メリット・デメリット」「活用例」「問題点」などの基礎知識をわかりやすく解説します。

生成AI(ジェネレーティブAI)とは、生成系人工知能

生成AI(ジェネレーティブAI)とは、人間がプロンプト(命令文やデータ)を入力すると、コンピュータが文章・画像・音楽&音声・動画などを自動生成する人工知能です。

補足すると、生成は「ものをつくり出す」という意味になります。
また生成AIを英語で言うと、Generative AI(ジェネレーティブAI)になり、日本語に直訳すると「生成系人工知能」もしくは「生成的人工知能」です。

従来のAIは、「認識系AI」または「識別系AI」(Discriminative AI)と呼ばれ、文字認識・画像認識・音声認識といった機能に留まっていました。

生成AIは、認識系AIとは違い、人工知能が自らの判断で文章生成・画像生成・音楽&音声生成・動画生成など、さまざまな種類のコンテンツを自動作成するのがすごい点です。

文章生成AI・画像生成AIの代表例を挙げると、以下になります。

ChatGPT(チャットジーピーティー)
文章生成AIと言えば、OpenAIが2022年11月に公開した「ChatGPT」が有名です。
ユーザーがプロンプト(テキストやデータの入力)を行うと、AIが対話形式で回答してくれます。

Stable Diffusion(ステイブル・ディフュージョン)
画像生成AIと言えば、2022年に公開された「Stable Diffusion」が有名です。
ユーザーがプロンプト(テキスト入力)を行うと、AIが画像を作成してくれます。

それでは続いて、企業が生成AIを活用するメリット・デメリットについて見ていきましょう。

企業の生成AI(ジェネレーティブAI)活用のメリット

企業が生成AIをビジネスに活用するメリットは、主に以下の3つになります。

  1. 業務効率化につながる
  2. アイデア出しの助けになる
  3. 技術革新(イノベーション)につながる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.業務効率化につながる

文章・画像・音楽&音声・動画などを作成する作業の一部を、生成AIにサポートしてもらうことができます。
具体的には、人間はプロンプト(命令文やデータ)を入力して、生成AIがコンテンツを自動生成し、人間がその創作物を修正・編集するイメージです。

これにより、業務効率化・生産性向上、ひいては労働力不足の解消や人件費の削減にもつながります。

2.アイデア出しの助けになる

生成AIは、何かしらのコンテンツ制作を考える際、生成AIをアイデア出しのツールにするのもよいでしょう。
たとえばPR記事や広告を考えるときに、最初のたたき台として、サンプルの文章・画像・音楽&音声・動画を簡単に作成できます。

ユーザーの「こんなイメージのものをつくりたい」というインスピレーションをプロンプト(命令文やデータ)として入力するだけで、生成AIがそのイメージをかたちにしてくれます。

3.技術革新(イノベーション)につながる

生成AIを活用することは、技術革新(イノベーション)を起こすことにもつながります。
これにより、いままで顧客に提供できなかった「新商材の開発」や「既存商材の品質向上」につながる可能性を秘めているのです。

そして、最先端の生成AI技術を導入している会社はまだ少なく、先駆者利益を獲得できるブルーオーシャン戦略にもなります。

企業の生成AI(ジェネレーティブAI)活用のデメリット

一方、企業が生成AIをビジネスに活用するデメリットは、主に以下の3つになります。

  1. 情報漏洩の危険性がある
  2. 創作物の品質が安定しない
  3. 責任の所在があいまいになる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.情報漏洩の危険性がある

社内の人間が、誤って生成AIに会社の重要情報を流してしまうなど、情報漏洩のリスクが伴います。
特に顧客の個人情報、会社の機密情報などの取り扱いには、厳格なルールを設けることが必要です。

生成AIを利用する場合は、セキュリティ対策に万全の注意を払いましょう。

2.創作物の品質が安定しない

生成AIを利用する際の問題点は、創作物のクオリティが安定しない点です。
商用利用できるレベルの品質のコンテンツを創作することもあれば、フェイク情報や著作権侵害に該当する創作物もつくってしまいます。

またロボットが理解しやすいプロンプト(命令文やデータ)を入力しないと、まったく意図していない創作物になってしまうでしょう。

3.責任の所在があいまいになる

コンテンツ制作に生成AIが介在すると、何か問題が起きたときに、責任の所在が不明確になります。

生成AIは発展途上ゆえ、嘘をついたり、他人の作品を無断使用したりといった問題行動を起こしてしまいがちです。
とはいえAIが責任をとることはできないので、最終的には人間が責任をとるかたちになるでしょう。

となると、責任の所在を細かく決める手間が発生すると考えられます。

企業の生成AI(ジェネレーティブAI)活用例

生成AIの活用方法は多岐にわたり、業務効率化につながるものが多数あります。

具体的な活用例としては、以下の5つです。

  • 記事作成業務の効率化
  • Web制作(ホームページ制作)業務の効率化
  • マーケティング業務の効率化
  • オペレーター業務の効率化
  • ゲーム開発業務の効率化

それぞれ、詳しく見ていきましょう

記事作成業務の効率化

生成AIを活用することで、文章作成の一部を自動化できます。
特にAIが得意なのは、ニュース記事や商品説明文といった文章の型がある程度決まっているような文章作成です。

ただ文章生成もまだまだ不完全ゆえに、人間によるファクトチェックは必要で、文章作成の補助ツールといったニュアンスが強くなります。

Web制作(ホームページ制作)業務の効率化

生成AIは文章作成だけでなく、イメージ画像をつくることも得意で、これらはWeb制作(ホームページ制作)の業務効率化にも使えます。

たとえば、いままでは画像素材サイトで写真を探し出す手間がありました。
しかし、画像生成AIを使えば希望の写真をつくり出すので、画像選定の手間を大幅に削減できる可能性があります。

マーケティング業務の効率化

生成AIを利用することで、ユーザーの嗜好や行動履歴などを学習し、個別にカスタマイズされた商品・サービス提案を行うことができます。
実際、ECサイトでは、ユーザーの過去の購買履歴や閲覧履歴をもとに、レコメンドする機能がついています。

将来的には、需要予測などにもとづいて、最適な広告文・広告画像・広告動画などを組み合わせて広告を自動作成することもできるかもしれません。

オペレーター業務の効率化

生成AIは、現時点でも、コールセンターやオペレーターの一部業務を代行しています。
たとえば問い合わせの際は、チャットボットなどが一次対応して、二次対応以降は人間が行うといった具合です。

簡単な問い合わせなら、すべて生成AIで自動対応できる可能性もあります。

ゲーム開発業務の効率化

生成AIが自動作成したデータを人間が修正するかたちで、ゲーム開発も効率化できます。

特に、ゲームの「背景イラスト」や「テクスチャ素材(模様・凹凸・質感など)」は、画像生成AIに作成代行してもらいやすいでしょう。

メインキャラクターの作成など、高度なクリエイティブ技術が必要な部分は人間が担当して、クリエイティブ度合いが低い背景画像などはAIに担当してもらうといった役割分担も可能です。

企業の生成AI(ジェネレーティブAI)活用の問題点

企業が生成AIを活用する最大の問題点は、著作権侵害の問題が複雑化している点です。

もし著作権侵害で裁判沙汰になると、10年以下の懲役もしくは、1,000万円以下の罰金(損害賠償金)が科せられるリスクがあり要注意です。

生成AIによる創作物の著作権侵害は、次の2つに該当するかどうかになります。

  1. 思想や感情を表現しようとする「創作意図」
  2. 具体的な結果物を得るための「創作的寄与」

ただ注意点として、人間による「創作意図」「創作的寄与」の定義が不明確であり、法整備が必要な状況です。

(画像引用元:内閣官房『AIによって生み出される創作物の取扱い(討議用)

このように著作権問題が複雑化するなか、一般社団法人日本ディープラーニング協会が『生成AIの利用ガイドライン』を作成しています。

企業で生成AI活用をお考えの方は、2023年5月公開の『生成AIの利用ガイドライン【簡易解説付】』に目を通しておくのがおすすめです。

このガイドラインを参考にして、企業での活用方法を探るのが、現時点での最善の方法でしょう。

生成AI(ジェネレーティブAI)の活用と問題点のまとめ

最後に、企業が生成AI(ジェネレーティブAI)をビジネス活用するメリット・デメリットと問題点をおさらいします。

生成AI活用のメリットは、「業務効率化」「アイデア出しの助け」「技術革新(イノベーション)」につながることです。
一方のデメリットは、「情報漏洩の危険性」「生成物の品質が不安定」「責任の所在があいまい」が挙げられます。

そして生成AI最大の問題点は、著作権侵害の線引きが複雑化していることです。
簡単にできる著作権問題の対策は、『生成AIの利用ガイドライン』の順守になります。

生成AIは活用メリットが大きい反面、デメリットや問題点もたくさんあるので、企業でのビジネス利用は慎重に行うとよいでしょう。