ERPとは、生産管理・販売管理・会計管理といった経営管理業務を一元管理するシステムです。
今回は「ERPの特徴」「基幹システム・ERPパッケージとの違い」「ERP導入の流れ」について、わかりやすく解説します。
ERPとは
ERPとは、エンタープライズ・リソース・プランニング(Enterprise Resources Planning)の略で、日本語に直訳すると「企業資源計画」になります。
ERP(企業資源計画)は、わかりやすく言うと、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を一元管理することで、業務の効率化を図るシステムです。
具体的なERPの基本機能(基本要素)としては、生産管理・販売管理・会計管理・人事管理・営業管理・購買管理といった経営管理システムがあります。
▼ERPの基本機能(基本要素)
こういった複数の経営データを1カ所にまとめてシームレスに管理することで、無駄な業務を減らし、経営資源の有効活用につなげるのです。
ちなみに、自社に最適なERPのシステムは、基本的に100社あれば100通りのものになります。
ERPと基幹システムの違い
次に、ERPとしばしば混同される基幹システムの違いについて説明します。
基幹システムとは、生産管理、販売管理、会計管理システムなど、企業の中心となるシステムのことを指します。それらはそれぞれ独立したシステムであることが許容されます。
一方、ERPは、生産管理、販売管理、管理会計システムなど、経営の各部門を一元管理するコンセプトが基盤になっています。
ERPと基幹システムの主な違いは以下の通りです。
- 基幹システムは「個々の独立システム」として主要業務の最適化を目指します。
- ERPシステムは「全体最適のシステム」として経営全体の最適化を追求します。
ERPパッケージとは
ERPパッケージは、主要な業務を一つに統合するシステム、すなわち基幹業務の統合ソフトウェアパッケージのことを指します。
例として、ERPパッケージの構造を理解するために考えてみましょう。基幹システムが生産管理、販売管理、会計管理システムで構成されている場合、これら3つの部門を一元的に統合したパッケージがERPパッケージとなります。一方で、人事管理、営業管理、購買管理システムなど、他の独立した業務システムはERPパッケージに含まれていない点が特徴です。
▼ERPパッケージの一例(基幹システム:生産管理・販売管理・会計管理)
ERPとERPパッケージの違いは、簡単にまとめると、下記になります。
- ERPは、オーダーメイドのシステム
ERPは、一からオリジナルのシステムをつくる「スクラッチ開発」のシステムです。
すべてのシステムが統合されており、一元管理することができます。 - ERPパッケージは、セミオーダーメイドのシステム
ERPパッケージは、独立した既存システムを組み合わせてつくる「パッケージ開発」のシステムです。
すべての既存システムが統合されているとは限りません。
一からカスタマイズするタイプのERPより、ERPパッケージのほうが短い期間・少ない工数で開発できるためコストを安くできます。
基本的にはERPパッケージを導入する企業が多く、ERP導入がERPパッケージを意味しているケースも多々あるのが現状です。
ERPのメリット
ERP導入のメリットは大きく3つあり、「業務効率化&生産性向上」「経営の見える化&経営判断の迅速化」「内部統制&ガバナンスの強化」につながります。
業務効率化&生産性向上
ERP導入により、「業務効率化」と「生産性向上」を図れます。
たとえばシステムが連携(一元管理)されていれば、1つのシステムに入力するだけで、自動的にほかのシステムにもデータが反映され、余計な手間は発生しません。
しかし、システムそれぞれが独立したものであれば、同じことをシステムごとに入力するといった無駄なプロセスが発生してしまいます。
こうした業務プロセスを少しずつ自動化することで、組織全体の業務効率化につながるのです。
本来もっと注力すべき業務に集中すれば、より少ない時間で成果を上げることができ、生産性向上にも寄与します。
経営の見える化&経営判断の迅速化
ERP導入は、「経営の見える化」ひいては「経営判断の迅速化」にもつながります。
ここでいう経営の見える化とは、ヒト・モノ・カネ・情報をはじめとした経営資源の可視化です。
ERPを活用することで、経営資源をリアルタイムに正確に見える化できます。
こうした特徴は、迅速かつ的確な経営判断を行うのにも役立つはずです。
特に現代は変化が激しく、年を追うごとに製品ライフサイクルも短縮化しており、難しい経営判断を求められることも少なくありません。
経営情報をリアルタイムに可視化し、スピーディーな意思決定を行うことは、今後ますます重要になると予想されます。
内部統制&ガバナンスの強化
ERP導入により「内部統制」や「ガバナンス」の強化を図り、会社経営におけるリスクの回避・低減につなげることもできます。
内部統制(internal control)とは、故意または過失によって発生する、違法行為や不正業務を防ぐための社内のルールや制度です。
たとえば、情報漏洩を防ぐための「USBの無断持ち出し禁止」などのルールが挙げられます。
ERPを活用して、業務フローを一元管理し、業務をリアルタイムに監視できるようにすれば、ヒューマンエラーも発生しづらくなります。
また申請・承認フローなどのアクセス権限を細かく設定して、セキュリティーを強化することで、不正な情報の持ち出しや改ざんといったリスクも低減することが可能です。
なお、このように企業の管理体制を整備することは、ガバナンスの強化とも呼ばれます。
ERP導入の流れ
ERPやEPRパッケージを導入する流れとしては、次の6つの手順を踏むことになります。
- ERPの導入目的を明確にする
- プロジェクトチームをつくる
- 自社業務の棚卸しを行う
- 新しい業務フローを構築する
- ERPをテスト運用する
- ERPを本格運用する
それぞれのプロセスを詳しく説明しましょう。
手順1.ERPの導入目的を明確にする
「そもそも、なんのためにERPを導入するのか」を明確にするのが、ERP導入の第一歩になります。
もし業務効率化によるコスト削減やDX推進を実施したいのであれば、いままで実施してきた作業が必要なくなるような、新しいシステムをつくり上げる必要があるでしょう。
せっかくERPを導入しても、いままでの延長線上のシステムになってしまっては、あまり意味がありません。
こうした失敗をしないためにも、最初にERPの導入目的を言語化して、それをもとに必要な経営管理システムを選定、構築していく必要があるのです。
手順2.プロジェクトチームをつくる
ERP導入を成功させるには、プロジェクトチームづくりが欠かせません。
まずプロジェクトリーダーには、役員クラスの方が就任する必要があります。
なぜなら生産・販売・会計・人事・営業・購買部門など、業務全体を熟知していないと務まらない仕事だからです。
次に各部門のエース級のメンバーをプロジェクトチームに入れていく必要があります。
個々の業務内容を熟知しているメンバーの意見を聞いて、システムづくりに反映させるためです。
このように「役員クラスのプロジェクトリーダー」と「各部門のエース級のプロジェクトメンバー」が、議論し合ってシステム仕様を決めることが理想と言えます。
手順3.自社業務の棚卸しを行う
チームづくりが終わったら、自社業務の棚卸しを実施します。
個々の業務を一元管理するためには、一度すべての業務を洗い出すことが大切です。
とにもかくにも、重要度の高い基幹部門の業務から重要度の低い部門の業務まで、漏れなくダブりなく列挙しないことには、業務を連携するステップには進めません。
この棚卸しを実施していない状態で、ベンダー(販売業者)に相談しても、抽象的な提案しかしてもらえないでしょう。
業務の棚卸しをして初めて、自社もベンダーも「具体的にどうするか」を考えることができます。
手順4.新しい業務フローを構築する
自社業務の棚卸しが終わったら、従来の業務フローを一新させた「新しい業務フロー」を構築する必要があります。
先ほど列挙した業務をつなぎ合わせて、より効率的な業務フローを考えるのです。
この段階で、ベンダー(販売業者)と相談して、より具体的なものにしていきます。
注意点としては、棚卸し作業が十分でない段階では、まだ着手しないようにしましょう。
組み込む業務をあとから追加すると、余計な手間がかかってしまうことがあるからです。
手順5.ERPをテスト運用する
何度も打ち合わせをしてつくったシステムも、実際に使ってみると「なんか思い描いていたものと違う……」と感じることもあるでしょう。
そのため、ERPをテスト運用して、問題点やギャップがないか確認する作業が必要になります。
ITツールがリリースされるとき、「ベータ版(試用版)→正式版」のように段階的に提供されることがありますが、そのイメージに近いです。
修正箇所をピックアップして、完成版に反映させていきます。
手順6.ERPを本格運用する
ERPのテスト運用がうまくいったら、本格運用を開始します。
ERP運用マニュアルを作成して、それを社内配布し、実際に使ってもらうのです。
あとは利用者からの意見に耳を傾け、必要に応じて調整していくかたちになります。
何か調整が必要になった場合は、ERPベンダーのサポート期間内に連絡して、支援してもらうようにしましょう。
以上、「ERPの特徴」「基幹システム・ERPパッケージとの違い」「ERP導入の流れ」についてお伝えしました。
ERPないしERPパッケージ導入の参考になれば幸いです。
まとめ
ERPは、企業の基幹業務を一元的に統合する強力なツールです。主要な業務の流れを効率的にすることで、企業の競争力を高め、持続的な成長をサポートします。正しく理解し、適切に活用することで、経営の最適化を追求する企業の強力な味方となるでしょう